裸コインと鑑定スラブ入りコインについての話

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こんにちは!JCCの阿部です。

先日、打ち合わせの為、久しぶりに泉岳寺にあるダルマの大谷さんにお会いしてきました。
大谷さんとは2013年に私が某コイン会社に代表として携わることになった際、初めてお会いさせていただき、現在に至るまで、私にとっては本当に大切なコイン業界の師のお一人です。

その打合せの折、雑談ベースで「コインはやっぱり裸が一番いいね」という流れになりましたが、これはコイン好きであれば、至極当然な話です。

裸というのは、鑑定スラブに入っていない、コインそのものという意味です。
コイン自体の状態、質感、重み、艶、オーラ、全てを直に感じ取れるのが裸コインの魅力であり、まさにコイン収集の醍醐味と言えます。

しかし、ここ近年はショップやオークションなどマーケットにでてくるコインの殆どが鑑定済みのスラブ入りコインです。
これは、コイン愛好家としては少々寂しい気持ちもしますが、ただ、私はコイン業界にとっては良い兆しでもあるとも考えています。

その良い兆しというのは、近年、コインマーケットに新しい層の方々が確実に増えてきているということです。いつまでも一部のマニアだけのマーケットでは、業界自体が廃れていく一方です。このような新しい層の方々がコインを購入されているのは本当に喜ばしいことです!

これまでのコインマーケットは、根っからのコイン好きのコレクターが多数を占めており、裸コインが好まれていましたが、 新しくコインに興味をもたれた方々は当然、コイン自体には詳しくなく、もちろん鑑定眼もありません。
その為、多少割高となっても裸コインよりも鑑定済のスラブ入りコインを購入されます。
その結果、全体のニーズが、「裸コイン<スラブ入りコイン」となり、現在のマーケットで売られている大多数がスラブ入りコインとなっているわけです。

ちなみに、多少割高となっても、と書きましたが、同じコインで裸とスラブ入りとでは、どのくらい価格に差があるのでしょうか。

これはコインによっても違いがありますが、例えば、近年値上がりが著しい、オーストリアの1908年発行、100コロナ金貨 雲上の女神を例に言いますと、

裸で、プルーフ(PF) 未使用(UNC)・・・120万円
スラブ入りで、NGC PF62 ・・・220万円

と言った感じです。
全く同じコインでも、裸とスラブ入りだと、何と100万円も差が出るわけです。
これは、分かりやすい一例ですが、殆どのコインで、裸とスラブ入り(※)では1.2倍~2倍の差があります。※鑑定結果の数字にもよります。

「そんなに差があるなら、裸で安く買って、スラブに入れて高く売れば儲かるじゃないか!」と思われるでしょうw
その通りです。 鑑定眼のある我々のようなプロの業者であれば、そのような取引も可能です。 しかし、いつもいつも、そのような美味しい話ばかりではありません。

プロが判断して、PF62は付くだろうと思い、裸で安く仕入れてNGCやPCGSへ送っても、戻ってきたらUNC Detailsだったということもあり得るのです。
そうなると、先ほどの一例でいうと、

裸で、プルーフ(PF) 未使用(UNC)・・・120万円 で仕入れ

NGC UNC Details Cleaned・・・60万円で売却

となり、大損害!ということになり兼ねません。
つまり、裸で仕入れるということは、いかに業者であっても、相応のリスクを伴う訳です。先ほどのスラブ入り、NGC PF62であれば、すでに鑑定済でノーリスクですので、そこまでの高値(220万円)を出してでも欲しいという方がおられるのも頷けます。

しかし、現実に、我々が実物を見た上で、「PF62はつくだろう」と自信を持って仕入れた結果が UNC Details だった場合、「鑑定眼が無かった結果で仕方ない・・・」と簡単に諦めるかと言うと、そうではありません!

なぜかというと、”我々の方の判断が正しくて、鑑定会社の判断がおかしい”ということも多々あるからです。

ですから、そのような想定外な結果で鑑定から戻ってきた場合、我々はあることをします。
そのあることとは・・・・今日はこのあたりで、次回をお楽しみに!

T.ABE / JCC